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3Kと言われる農業なのに、何故高年齢化した兼業農家で米作が成立するのか?
農業の高年齢化が問題とされておりますが、実際はどのような状況なのでしょうか?
2010年世界農林業センサスによれば、年齢別農業従事者数(2011年9月30日公表)は次のようになっております。
総計 4,736千人 100% 39歳以下 684千人 14% 40-49歳 586千人 12% 50-59歳 1,042千人 22% 60-64歳 501千人 11% 65-69歳 473千人 10% 70歳以上 1,450千人 31%
なんと、70歳以上の農業従事者数が全体の31%(1,450千人)いるということなのです。
65歳以上ならば41%、60歳以上であれば52%と高齢化しているのがわかります。
こんなに高齢化してしまっているのかと驚いてしまうのは、私だけではないでしょう。
2010年世界農林業センサスによれば、農家数を主業、準主業、副業的と3分類する平成22年統計資料もあります。
全国農家数:1,631,206 主業農家数 359,720 準主業農家数 388,883 副業的農家数 882,603
ここで、主業農家農業とは、所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家をいう。
準主業農家とは、農外所得が主(農家所得の50%未満が農業所得)で、1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家をいう。
副業的農家とは、1年間に60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいない農家(主業農家及び準主業農家以外の農家)をいう。
農家数を主業、準主業、副業的と3分類する統計をもう少し見てみましょう。
農業構造及び所得の動向平成21年2月農林水産省によれば、農産物年間販売金額は準主業農家で48万円、副業的農家で32万円です。
全体の平均 120万円 主業農家 425万円 準主業農家 48万円 副業的農家 32万円
農業就業人口(男女計)の平均年齢は次のとおりです。
全体の平均 65.3歳 主業農家 58.4歳 準主業農家 63.7歳 副業的農家 70.6歳
稲作が農産物販売金額1位である農家数の割合は次のとおりです。
全体の平均 60% 主業農家 24% (総計に占める割合 5.4%) 準主業農家 67% (総計に占める割合 16.8%) 副業的農家 71% (総計に占める割合 37.8%)
すなわち、準主業農家とは主にサラリーマン家庭が両親と共に、主に米作をしている農家であり、副業的農家とは高齢者だけの世帯で主に米作を営んでいる農家といった状況です。
さらに分析するために、前回の資料、耕作面積別米作り農家所得をもう一度引用してみましょう。
0.5ha未満 @農業所得 -138千円 (ちなみに売上は572千円) A農業生産関連事業所得 0千円 B農外所得 1198千円 C年金等の収入 2609千円 D総所得(@+A+B+C) 3669千円
ここで着目すべきは、C年金等の収入です。
0.5ha未満の農家所得では、C年金等の収入は2609千円で,総所得の71%を占めております。
次のように、0.5-1.0haの農家所得でも、C年金等の収入は1905千円と、総所得の42%を閉めております。
0.5-1.0ha @農業所得 -20千円(ちなみに売上は1127千円) A農業生産関連事業所得 0千円 B農外所得 2648千円 C年金等の収入 1905千円 D総所得(@+A+B+C) 4533千円
つまり、耕作面積が少ない兼業農家は年金等が主な所得となっている、高齢化農家であることがわかります。
この年金収入に加え、1.0ha以下の耕作面積しかない農家が932,674で全体の56%を占めていること、兼業農家数1,179,779は、全国農家数の72%を占めていること、60歳以上の農業従事者数が全体の52%%であることを考えると、兼業農家の多くは60歳以上の農業従事者であることが想像されます。
そして、全国農家の86%が年間農産物売上が50万円以下ですので、60歳以上の農業従事者が多くを占める兼業農家の農業収入は50万円以下と推定されることになります。
副業的農家から見れば、高齢者のいるサラリーマン家庭あるいは高齢者世帯が、米作りをして年間50万円程度の農業収入を得ている姿、あるいは兼業農家という見方をすれば、年金で暮らしながら、米作をしているという農家が浮き彫りになります。
ここで、更に疑問が湧いてきます。
確か農業は3Kと言われ、若者が離れて行ってしまったはずです。
しかし、農業従事者数が60歳以上であれば52%、70歳以上に限れば全体の31%と高齢化しているのに、農業、特に米作は出来るのでしょうか?
実はここに、米作りの本質を物語る秘密があるのです。
実は米作りは高度に機械化されていて、田植え機に苗をセットする体力があれば米作りはできる、高齢者向きの作物なのです。
労働時間からみても、米作りは兼業農家向きなのです。
何故なら、繁忙期を除けば、一ヶ月に必要な労働時間は60時間未満と少なくて済むのです。
出典:新潟市の米農業−強さと弱さの構造分析− 時事通信社「地方行政」(10023号〜10030号)で投稿掲載されたものに加筆修正したもの 望月迪洋(新潟市都市政策研究所主任研究員)その他
農作業の負担を見ても、例えば20アールを耕作する典型的いちご農家の場合で労働時間は年間1900時間程度。その労働時間の内容を見ると、最も手間のかかる収穫がかなりしんどい姿勢をとりながらの手摘みであり、その他の工程もほとんどが手作業。基本的には専業フルタイムで従事する必要がある。元気なうちはいいが、年齢が上がってくるとつらくなってくる。もっとも、これが農業本来の姿でもある。
一方米は、4ヘクタールを耕作する典型的な米農家の場合で年間の労働時間は900時間といちごの半分。田植えとその準備をする4月、5月、収穫の9月、これら3カ月は比較的労働時間が多いものの、それ以外の月は60時間未満。そのため早朝、夕方や週末を活用すると米以外のこともやろうと思えばできる。また作業内容も高度に機械化が進んだ結果、労働集約型ではなくなっており、体力を必要としない。農業関係者の間では冗談交じりに、田植え機に苗をセットする体力があれば米作りはできる、と言われている。このため、かなり高齢になってもできる。また他の仕事を持っていても、忙しい月さえどうにか切り抜けられればどうにか続けられる柔軟性の高さが特徴である。
米作は労働時間が少なく、高度に標機械化されていて体力の負担が少ない。また、プロセスの標準化が進んでいる上、近年下がってきているとはいえ買取価格も安定しており、絶え間ない創意工夫や心配が必要ないという意味で精神的な負担も相対的には少ない。こういう米作に慣れきった農家にとっては新たな仕事を覚えながら労働時間、体力、精神的負担の増える他の作物に取り組んでいくというのは相当難しいというのが現実である。新潟市においては農家の3分の2以上が米専業である。
これで兼業農家と高齢化でも成立する米作り農業の秘密が解き明かされました。
むしろ米作りは、高齢化・兼業農家に最適な農作物であるとも言えることになります。
要するに、高度な機械化は、米作は高齢化・兼業化をむしろ推進したといっても過言ではありません。
ここでさらなる疑問が浮かびます。
確か政府が発表した「農業再生行動計画」では、「農地集積の推進」が重要施策として掲げられていたはずです。
高度な機械化を推進した結果、米作りは高齢・兼業向きの作物となっている現状をどのようにするのでしょうか?
次回にはこの点を検証したいと思います。
■TPP参加のメリットと問題点を考察する ■「TPPの定義と参加のメリット 」 ■「TPPと農業問題の本質:野菜の関税は3%でも国産野菜が82%を占めていることは何を意味するのでしょうか?」 ■「TPPと農業問題の本質:全国農家数のうち、農産物販売金額が年間50万円以下の農家数は全体の86%」 ■「3Kと言われる農業なのに、何故高年齢化した兼業農家で米作が成立するのか?」
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TPPと農業問題の本質:3Kと言われる農業なのに、何故高年齢化した兼業農家で米作が成立するのか? |
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