「北朝鮮による非道な日本人拉致問題の解決の方法は、一つしかない。

 

 即時、無条件に、拉致被害者の家族を帰国・来日させるとともに、拉致を国家犯罪と認め、拉致事件の全容を明らかにすることである。拉致問題を根本的に解決するための方策は、これ以外にない。」

(2004/2/13/02:30 読売新聞 社説より)

 

 

さて、この社説はなかなかセンセーショナルな書き出しであります。まるで街頭演説で政治家が自説を説法するような高揚するものを感じ、わたしにもつい「どんな内容なのかな」と引きつけられるものがあります。

 

しかしながら、ディベート的に考えるとこの社説にあるように「解決の方法は、一つしかない」と断言をするにはかなりの難があるといわざるを得ません。

 

すなわち問題は解決策がひとつしかないことをどうやって立証するか、あるいはそうした立証をその文章の中で十分に論議できたか、という点にあります。

 

本来よく使われる手段としては、いくつかの解決策を比較した上で、これが最もよい解決策だとする方法です。こうすればこの結論に至るまでの過程を読者と共有することができ、説得性が増すのです。

 

これに対し、本例のように他の解決策を論ずることなしに開口一番これしかないとするのは、ディベートに長けた人に対し多くの疑問をすぐさま持たせてしまうことになります。

 

たとえば、拉致問題を真剣に考えている人なら、「まずは拉致被害者の家族を帰国・来日させることが先決だ。何故なら、北朝鮮が拉致を国家犯罪と認めるはずがなく、これを抱き合わせてしまえば、拉致被害者の家族を帰国・来日が実現しなくなってしまう」などど、別の解決案を1つや2つ考え付くものです。

 

もしひとつでも対案がだされると、ディベート的にいえば、はじめの提案(立論といいます)がつぶれてしまうことになります。

 

何故なら1つしかないと断言をして論陣をはったのに、別の解決策が提示されるということは、他の考え方を包含しておらず、選んだひとつの解決策が最も良いかどうかは不明確になってしまうからです。

 

もし「これが最もよい」という表現であれば、比較の問題であり、まだ対抗ができる可能性が残されているのですが、「これしかない」式ではこうした比較も自ら放棄しているので対処のしようがありません。

 

センセーショナルに表現することはジャーナリズムとしては重要なことだとは私も思います。しかし、ディベート的に考えれば、上記のように読み進む前に「どこか間違っているのでは?」と直ぐに考えてしまい、かえって逆効果になるケースが多いとといわざるを得ないのです

 

読者の皆様も、この「これしかない」方式を採用するときには十分に他の選択肢も検討した上で、気をつけて使うように心がけていただきたいと思います。

 

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