テキスト ボックス: 「馬なり」

今回は、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャーの茂木 健一郎氏の文章を取り上げたいと思います。

 

今回取り上げるのは、茂木 健一郎氏がNikkei BP Netで連載をしている「超一流の仕事脳」から、「育てる」とは「時間を投資する」こと](2007/05/15)です。

 

茂木 健一郎氏は、東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者です。

 

茂木 健一郎氏は、この文章において、競走馬の調教師である藤澤和雄さんの話に深い示唆を感じたと述べています。

 

なお、藤澤和雄は、競馬界の革命児と言われる調教師で、その独自の調教術で、10年連続の年間最多勝、有馬記念3連覇、そして海外GI制覇等、次々と競馬界の記録を塗り替えてきた方です。

 

では、その茂木 健一郎氏の文章を引用してみましょう。

 

 

「競走馬の調教師である藤澤和雄さんのお話には、「人を育てる」「能力を引き出す」といったことがらについて深い示唆があった。藤澤さんの調教で特徴的なのは、それぞれの馬を目いっぱい走らせて鍛えるのではなく、実力の劣る馬も強い馬と一緒に走らせる「馬なり」の方法にあるという。

 

 それぞれの馬が競走しているのではなく、一緒に走っている。しかもその時に、実力が劣るものが強い馬と一緒に走ることによって、実力を引き上げてもらえる。強い方が先に行ってしまうと、弱い馬は走ることから脱落してしまう。人生でもそういうことはたくさんある。

 

 その視点から見れば、能力別学習(学級)などは問題がある。そこで脱落したものはオレはだめなんだとあきらめてしまう。一緒に走っていると思えば、実力の劣るものもそこで引き上げてもらえる。変に階層を作ってしまうのは危険だというのは、納得のいく話だ。それこそ公務員なんかは、1種、2種とか 最初から階層を作ってしまう。それでは一緒に走れなくなる。

 

 「馬なり」というのは関係性と自発性に基づいて、能力を開発することである。だから「人なり」というのもあるはずだ。この方法は合脳的でもある。一緒に走ることで能力を引き出してもらえるというのはたいへん深い話だった。」

 

 

この文章の中で、茂木 健一郎氏は、次のような論理で話を展開している。

 

      実力が劣るものが強い馬と一緒に走ることによって、実力を引き上げてもらえる「馬なり」が有効である。

 

      (これを人に当てはめれば、)人生でもそういうことはたくさんある。

 

      この視点から見れば、能力別学習(学級)などは問題がある。

 

 

つまり、実力の劣る馬も強い馬と一緒に走らせることで、能力を引き出してもらえるという「馬なり」が人間にも当てはまるという前提に立っているのです。

 

 

まず、私の論点を展開する前に、明らかにしておきたいのは、私は決してこの論理が良いとか悪いとかという価値判断をここで提示するつもりはないことです。

 

あくまでも、論理の展開を勉強するために、この文章を取り上げております。

 

 

さて、話を元に戻しましょう。

 

さて、茂木 健一郎氏は「馬なり」を導入することで、何を達成したいのでしょうか?

 

それは、能力別学習(学級)の例では、勉強が分かるようになることですね。

 

 

では、一般の学校では何が起きているのでしょうか?

 

一般の学校では、1つのクラスで、全員が同じ内容を学んでいます。

 

そこには、理解の早い子供と遅い子供が一緒になっています。

 

つまり、「馬なり」手法が実現されていますね。

 

でも、今日学校では、勉強が分からない「落ちこぼれ」が沢山いるのです。

 

「馬なり」手法は、うまくいってなのではないでしょうか?

 

 

考えても分かります。もし、分数がまだ理解できていない子供と、十分分かっている子供とを一緒の授業で教えると、どうなるのでしょうか?

 

もし、分数の分からない子供に焦点を当てれば、分かる子供には退屈な時間となってしまいます。

 

逆も同様です。

 

つまり、両者を同時に満足させるのは大変難しいのです。

 

 

別な例で考えてみましょう。

 

もし勉強が良く分かることが目的であるとすれば、それを達成することでお客様に感謝されてなりたっている、塾をみると効率的な手法が理解できると思います。何故なら、公立学校と違って、効率的でないと、塾に人が集まらず、つぶれてしまうからです。

 

では、塾では、「馬なり」手法を使っているのでしょうか?

 

違います。有名塾では、ほとんど能力別学習(学級)を導入しているのです。究極的には、個々人を指導する個別学習があります。

 

「そこで脱落したものはオレはだめなんだとあきらめてしまう」訳ではなく、むしろその人に合わせたレベルの勉強内容で、理解力を上げることが効果的だと考えられているからです。

 

英会話の学校も同じです。初心者と上級者を一緒に教えても、効率的でないのです。

 

 

ここで、理解できることは、一般論的には、「馬なり」が人間にも当てはまるように感じますし、また、理想郷のような心地よい響きもあります。

 

しかしながら、一般論ではすべてを網羅することは難しいのです。

 

特に筆者は、能力別学習(学級)を取り上げたのですが、おそらく十分に検証をして選んだわけではないのでしょう。

 

一般論と各論とは、別にきちんと検証をしないといけないのです。

 

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